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2008年10月02日

2008年09月29日

2005年12月24日

Jingle Jingle Bell

「どいつが持ってきたんだろうX'masなんか」
俺は好きな歌手の歌の一節を口ずさんだ。
世間は完全にクリスマスムード。それも当然、今日はクリスマスイヴだからだ。
だけど俺には関係無かった。
「受験生に盆も暮れもクリスマスも正月も無いっつぅの…」
予備校から駅に向かうところがまたひどい。
カップルはいちゃつき、ビラ配りの着ぐるみはトナカイ、どの店も店頭にはツリーを飾りつけている。
それら全てを横目に過ぎて、自転車を取りにいく。
自転車を出し、家を目指し走り出す。
開かずの踏み切りをうまくやりすごして自転車を走らせる。
駅周辺の喧騒が少し遠くなった頃、信号待ちしている俺の肩が叩かれた。
「?」
振り向いたそこにはサンタクロースがいた。
「やぁ。君、少し時間あるかな?」
「いえ。急いでますんで」
俺は即答した。この間も「すみません」と声をかけられ、延々と宗教の勧誘を聞かされたばかりだ。
もうこの寒い中の足止めはごめんだ。
できればすぐにでもさよならしたいが、信号はそれを許してくれない。
何でわざわざ歩行者用はスクランブルにするんだ。まったくイライラする。
「何で君はそんなにもイライラしているんだい?」
サンタは聞いてきた。
「受験で忙しいからです」
「ほう!高校受験かい?」
どう返すべきだろう。確かに俺は童顔ですけど。中学生に間違われますけど。
「大学です」
信号が変わった。俺は自転車を進めようとして、止める。
「あの…?」
俺の進路に立って頭を下げるサンタに困惑する。
「いやすまない。君が若く見えたから」
「いやいいですよ」
そんなことしてる間に非情にも信号機は再び赤を灯す。
「そうか〜受験生は辛いよな〜」
サンタはそんな俺の落胆も知らず、サンタはマイペースだ。
何処のサンタだ。会社に文句言ってやろうか。
「ところで本題なんだけど、君は今欲しいものがあるかい?」
お決まりだな。サンタの質問の定石だろ。
「身長と学力、あと彼女」
俺が人に欲しいものを聞かれた時に答える答え。スラっと言ってやった。
「ハハハ」
笑われたのが少し悔しくて俺は更に付け加える。
「あと余裕が欲しい。時間的にも精神的にも」
「ハハハ」
サンタは白い顎鬚を撫でた。
「余裕か…それは簡単に手に入るよ」
「え?」
俺はサンタを見る。横目で信号がまだ赤なのが見えた。
「勉強って言ったってその間中ずっと集中してるわけじゃない。疲れて休む時間も、少しボケッとする時間もある」
「まぁ…そうですね」
「そんな時間が1時間あたり5分あったとしたら10時間勉強しても50分息抜き、余裕の時間があったということになる」
もはや俺はサンタの言葉を聞き続けていた。
「それに食事をいつもより早く食べ終わる。3分早ければ1日9分自由な時間が生まれる。君がその9分をどう使うかは君次第。9分寝坊する。9分お風呂に長くつかる。9分友達とおしゃべりする。どうにでも使えるだろ?」
「なるほど…学校から早く帰ってきてもその分自由な時間も生まれる」
サンタは笑った。
「そうだよ。そういうことなんだ。もうだいじょうぶだね?」
「はい」
俺の心は満ち足りていた。
「ならばいいさ。よいクリスマスを」
「やっぱり勉強詰めですけどね…よいクリスマスを」
サンタは手を振り、街へと消えていった。
俺は青になった信号を渡り、走り出す。
携帯で時間をちらりと見た。
「え!!??」
俺は急ブレーキで停車した。
自分の携帯の時間が信じられず、腕時計、そしてコンビニの時計を見る。
時間は17:50。
俺の受けた授業が終った時間だった。
授業が終わってからここまでの移動、そしてサンタと話し込んでいた時間を考えて、不自然すぎた。
俺の頬に白いものが舞い落ちる。
暗い夜空から落ちてくる雪を見て笑った。
「メリークリスマス…ありがとう。Mrサンタクロース」

The END
posted by 佐文字 at 16:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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